日々これ喩え話

2014/06/02 キュウリの太さとモヤシの水と…
梅雨を前に猛暑となって、
早くも、冷し中華がおいしい季節になりました。

最近では、つけ麺やざるらーめんは一年中食べられますが、
天候不順の昨今でも、冷し中華だけは未だ季節限定です。
年に数か月だけのメニューだからこそ、自分好みの冷やし中華を求めて慎重に店を選びながら、うろうろと街を徘徊する日々が始まるわけです。

さて、冷し中華にのせる具は、薬味を除いて少なければ3種類、多くてもせいぜい6種類ぐらいです。
キュウリの細切り、錦糸卵などはどの店でも定番として使いますが、
後はチャーシューなのかハムなのか、あるいは蒸し鶏なのか、クラゲで中華風に寄せるのか、細切りの蒲鉾にゴマと紅ショウガと海苔をちらして和風に徹するのか、
数少ない具に何を選ぶかで、冷やし中華に対する店の本気度は、隠しようもなく伺い知れます。

昨今では具にこりすぎて、一皿千円を超す冷やし中華も当り前にある中で、
中華系のチェーン店では、やはりリーズナブルな一皿が味わえるわけですが、
大概この手の冷やし中華には、具としてモヤシがのっています。
そして、モヤシがのっている店の冷やし中華は、総じてキュウリの切り方が、異様に太いか、または輪切りなのです。

値段にひかれて店に入って、
モヤシと、太いキュウリと、さらにワカメと、ちぎったレタスなんかがのった一皿を前にすると、食欲を失うほどに深く後悔します。

ひげも取らずに使うこの水っぽいモヤシは、店が呻吟の末に選び抜いた、自慢の具だと言えるのか?
このキュウリの太さは、本当に食べる者の立場を考えて決めた太さなのか?
具を刻むのが手間だから、具の原価が高くなるから、
冷やし中華は、夏限定になっていたんじゃなかったのか?

決してモヤシもキュウリも、ワカメだって嫌いじゃないけれど、何だかその安直さが悔しくて、その悔しさと一緒に、噛み心地の悪いモヤシと、太いキュウリを飲み込んで、ついでに水っぽくなった汁まで全部飲み干して、さらに、こう想うわけです。

今みんなが、この一皿を冷やし中華と認めてしまえば、
一年中冷やし中華がメニューにのっかるかも知れないけれど、
その一年中メニューにのっている冷やし中華には、きまってモヤシと、太く切られたキュウリが、具としてのってくるのではないか?
そして問題は一気に、モヤシを具として美味しくする方法に、すりかわってしまうのではないか?モヤシは旨辛のラー油で一度あえてからのせろとか、そういう問題に!?

ああ、これは何やら、領土問題や外交問題にも似ているな…と。

そして心に決めるのです。
お店の人はこれを、「お待たせしました〜。冷やし中華で〜す」…とにこやかに持ってきたけれども、
当方の立場としてはこれを、ぜったいに冷やし中華とは認めません…
だから冷やし中華に、モヤシ問題は存在しません…

今月のオリジナル寓話(gooido.net)は「獲得した甲冑の重さ」。寓意堂の完全オリジナルです。

                      寓意堂亭主




2014/05/02 弱くても勝てます…
スポーツ界では人種差別問題が賑わしいようで、
サッカーでは投げ込まれたバナナが、バスケットではオーナーの私的な場面での発言が物議を醸しています。

そんな中、テレビで世界卓球を見ていたら、
日本の選手の得点時と、海外選手の得点時の、客席からの拍手の大きさに開きがありすぎて、その応援の仕方の露骨さに、何やらすこし気分が悪くなってしまいました。
以前は、ラリーの応酬やファインプレーには、誰彼の差なくもう少し拍手があったように思うのですが…

敵味方に分かれ、優劣を競って勝負を決めることは(それをより高い次元で楽しむかどうかも含めて)スポーツの本質のひとつですし、
また、ワールドカップや五輪に診られるように、国威や民族意識の高揚が、スポーツを下支えする大きな要素だとするのならば、
果たして差別意識を持つことが罪なのか、差別意識の発露の仕方が罪なのかは、人の振り見て我が振り直せ…と考える際、迷路に入ってしまうがごとくに悩ましいところなのではないでしょうか。

さて今春テレビでは、野球を題材にした二つの原作「弱くても勝てます」と「ルーズヴェルト・ゲーム」がドラマ化されているのですが、
何故いまさらドラマで野球? という多くの人が持つであろう戸惑いには、それぞれの原作が応えてくれています。
どちらの原作にも、「庶民がこの世に求めるべきは、まずは野球と少数のヒーロー」という戦後の3S政策的な、あるいは功利主義や強者の論理で捉えるプロ化された「野球」とは違う、皆が愉しむ本来の「野球」とは一体どういうものか、という捉え方が通底していて、
時計の針は進むときには進むものだと、実に興味深い思いを抱かせてくれたのでした。

私は野球が嫌いです…
これはなかなか、人前では言えない長年の禁忌的な思いなのですけれど、今春の二つのドラマの原作を見て、しばらくぶりに思いを改めました。
私はプロ野球が嫌いです…

今月のオリジナル寓話(gooido.net)は「白黒の石」。寓意堂の完全オリジナルです。

                      寓意堂亭主


2014/04/02 偽詐と真理と…
科学論文の真偽について、科学的でも論理的でもない、ワイドショーみたいな質問が記者席から飛ぶのを見ると、人々が潰してきた暇という名の膨大な時間に気付かされて、その滑稽さに愉快になります。

Aという目的があって、そこへ向うのために必要なBというステップを踏もうとする。
でもこのBが、Bとは言えぬ何かだとわかった…。
だから延々時間をかけて、BはBなのかCなのか、いやいやDだEだと熱心に議論をしはじめる。
いつの間にか本当のBはこのBだと論じたり、BよりCだと演じたりするプロパーが、経済活動をともなって定着し、目的がAから、BやCにすり変わる…。
人々は昔から、そういう長い長い時間を、過ごしてきたのだなぁ…と。

音楽の中身や、科学研究の目的や、冤罪における捜査方法の問題点や真犯人の行方は、すべてお茶の間の愉しみとは無縁と決め込んで、Aへ向かうための反省や方法論の構築が次代につながらないまま、また何十年かが過ぎてしまうのでしょうか。

今、超能力などに真剣に取り組む科学者たちが増えているそうですが、どうかBやCの論議にすり変わらず、足の引っ張り合いが起きないことを、切に願うばかりです。

信の世界に偽詐多く、疑の世界に真理多し。

福沢諭吉翁のこの言葉は、超能力の科学においてはともかく、少なくとも、記者クラブに象徴される現況のマスコミの報道内容についてみれば、実に言い得た言葉だなぁと感心します。

今月のオリジナル寓話(gooido.net)は「砂浜の絵」。寓意堂の完全オリジナルです。

                      寓意堂亭主




2014/03/11 たった3年で人生は変わる…
東日本大震災から3年…を扱った番組の合間に、
イギリスの人気グループの青年達について「たった3年で人生は変わる…」と呟くCMが流れて、
どうにも苦笑を誘います。

苦笑しながら、考えてみます。
3年前のあの日に、今日の東京の夜を、明日の福島の朝を、もしそのまま繋げてみたら…と。
いったい何が変わり、何が変わっていないのか。その変わったこと、変わらないことに、人としての理は、義は、はたして立っているのだろうか…と。

生死を前にすれば等しく被災者であっても、復興が進まぬまま3年たてば、居住環境にも仕事の有無にも、驚く程の格差ができる…。
福島で水が漏れても、東京は晴れて五輪を目指す…。
あれほどの非常時にも整然と列を守った民族への、心からの敬意が、歴史を知らぬ者達めという罵りの言葉に変わってしまう…。

たった3年で人の想いは変わる…と考えればよいのか、
あるいは、一見変わったようにみえても、変わらないものは、実は何があっても変わらないのだ…という、人の世の無情の凝縮と考えればよいのか…。

喉元を過ぎれば人は忘れる。
杞憂は日常にそぐわない。
災厄が箱から全部飛び出しても、希望は、箱の隅で凍えたように縮こまる。

せめて今日の祈りは、風化を防ぐ術でなく、鎮魂と同時に、理も義も通る希望への、目覚めの言葉であって欲しいと思うのです。

                      寓意堂亭主




2014/03/05 螺旋のように…
冬のオリンピックとパラリンピックのはざまで、
何やら世界がきな臭い。

惨く戦って悔い、冷たく戦って改め、壁を壊し、屍を積み上げ、
変わろうとして、いつも、世界は螺旋のようにねじ戻る。

国家を超えようとした仮想通貨も、誰が攻撃をしているのか、
単なる投機商品の行く末よろしく、
嗚呼、春の夜の夢の如し…と終わるのでしょうか。

きな臭さを感じるたびに、螺旋のようにねじ戻るたびに、
正義とは、どこまでも相対なのだなぁ、と感じ入ります。

無知のベール、という素晴らしい考え方があるけれど、
それも民主主義的な正義が前提にあっての話だとか。

ひとたび世に生れ落ちてしまえば、
自分を勘定に入れずに…という心の持ちようは、
持つべきものを持って生まれた人々には実に難しく、
正義論というよりも、美意識として論じるしかないのかもしれません。

ぐるぐると、ぐるぐると、切ないほどに幾度もねじ戻りながら、
螺旋は、どこへ向かっていくのでしょうか…。

今月のオリジナル寓話(gooido.net)は「良識のある晩餐会」。寓意堂の完全オリジナルです。
                      寓意堂亭主

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